仙人温泉トピックス

小屋番日記 8月20日〜9月1日
(高橋仙人 2015年9月2日掲載)

(9月1日)、雨。
深夜にトタン屋根を突き破る程の激しい雨。1日から大荒れの天候です。下山日なので憂鬱だよ。
4時半に起床。ビールと日本酒を飲んで二度寝をする。8時に起きてザックに下山の荷物を詰める。雨はずっと強く降り続いている。
10時に出発。少し雨足が弱まったが、止む気配はない。でも歩かなければ、用が足せない。山で暮らすための条件は健康であること、健脚であること、健全な精神を持っていることだね。心が病んでいては山で暮らすことができない。脚力がなければ山の仕事をこなせない。
仙人ダムに12時に着く。ミンミンゼミが鳴いている。欅平で缶ビールを二本飲んだ。今晩は鐘釣温泉泊まりなのでアルコールは飲み放題だ。
鐘釣温泉の宿で昼飯代わりに山菜うどんを食ってビールを二本飲んだ。15時にチェックインして、河原の露天風呂でまた一本飲んだ。
明日は山小屋の資材を調達するために、奔走するのだ。張り切るのだ。頑張るのだ。

(8月31日)、雨。
8月も今日で終わる。雨に祟られた月末になった。こんなに雨が降り続く年は記憶にない。悪天候なので登山者の姿はめっきり減ってしまった。

明日は休養のために下山する日だ。指の傷が治らなければ病院に行こうと思う。今は痛みが無くなってきたが、傷口が完全に塞がっていない。テープを剥がすと血が出る。ちょっと気持ちが悪いよ。
2日間安静にしたので、疲労は取れた。肩も腰も軽くなって楽だ。このくらいのんびり出来ると山小屋暮らしは極楽だよ。止められないね。
スタッフだけの夕食なので19時には酔いが回った。小森さん19時就寝。居候の木下さん20時就寝。仙人と田中さんは21時までテレビを見た。イタリアのイヌワシを一年間追った記録番組だった。ヒゲワシと云う翼長3メートルになるワシが生息していることも、初めて知った。
21時消灯。

(8月30日)、雨。
今日は本降りの雨だ。8月前半は晴れの日が続いて日照り気味だったが、後半は雨の日ばかりだ。外廻りの工事はストップしたままでね、気が揉めるのです。
指を怪我しているので、休養にはなる。まあ、焦ってもさらなる怪我をする可能性があるので、ここは頭を冷やして出直しだよ。
8時半、雪渓から夏道に上がる取り付き点が見つけられずに、ビバークした母親と10歳の息子が立ち寄った。ひもじい思いをしたのだろう、小屋に着くなり「そおめん、そおめん」と連呼する。気の毒だったので素麺に梨を付けてだしたら、美味い梨だ!と喜んでいた。

「仙人温泉小屋に泊まりたかったんです」と母親が言うので、入浴をサービスした。非常に喜んでくれた。記念写真を撮って、雨の中を元気に下山して行った。10歳のビバーク少年、将来が楽しみだね。

昼に去年来た、と云う広島県の登山者が到着。日本酒を土産に担いで来た。2年続けて宿泊してくれる人には、頭が下がります。
14時に予約の宿泊者も到着。夕食の用意はスタッフに任せて、仙人は傷の養生に努めた。
20時消灯。

(8月29日)、雨。
夜半の雨足が激しい。何回か目を覚ました。冷凍庫のために発電機を回す。発電機の調子が良くない。作動すれば燃料が切れるまで運転できるのだが、始動するまでが大変骨が折れる。
8時までビールと日本酒を飲んでゆっくりした。雨は降り続いている。外仕事はできないので、食堂の棟を補強する。概略をスタッフの田中さんに説明して、修理を任せた。
疲労がピークなので横になって眠った。
昼過ぎに予約の登山者が到着。スタッフの大西さんも到着。友人と荷揚げをしてくれたので助かった。去年まで池の平で手伝いをしていた木下さんも顔を見せる。小屋が賑やかになった。
ほぼ夕食の用意が終了した頃に飛び込みの登山者2人が来る。追加で副食品を揃える。いよいよ天ぷらをスタッフの田中さんが揚げかけた時、仙人は不覚にも左手の中指を、包丁で切ってしまった。狭い調理場に3人入っていたものだから注意力が散漫になっていたのだ。
血が止まらない。ちょっと深い傷だ。が、自力で治すしかない。救急車は来ないし、病院にも行けない。山小屋暮らしの辛い所ですね。
宿泊者の夕食をスタッフに任せて、別室で横になった。そのまま眠ってしまった。

(8月28日)、晴れ。後雨。
今日は午前中の天気が良さそうだ。明日からはまた崩れる予報なので、残工事を頑張らなければならない。
宿泊者の食事は4時半。なので、起床は3時半で良いのだが、スタッフの小森兄貴は3時に食事の用意を始めている。
ドッコイショ、と起きて味噌汁を作る。キャベツを盛り付ける。卵を焼く。炊けた飯をお櫃に移す。で、配膳をする。宿泊棟に行って「食事の用意ができました」と声をかける。
とりあえず、小屋番の朝の仕事はそれで終了です。
ホッと一息ついて、気付け薬のビールを飲む。次に栄養補給の日本酒を二合と少々飲む。最後にチャーハンを一皿作って、食って朝の休憩タイム。
客商売の疲れがとれた8時から目を覚まして、作業開始。今日は小屋閉め同様の仕上げをする予定。まず北側の壁を完璧な状態にするのだ。
資材が乏しいのて
廃材を再使用しながらなので、思ったよりは進まない。
でも、慌てない。平常心で作業に打ち込んでいないと、事故を起こす確立が高くなる。電動工具で指を切断すれば今年の営業は即終了だよ。とにかく病気と怪我は禁物なんだね、小屋番稼業にはね。
北側の壁は妥協しながら11時に完了した。もう少し、もう少し完璧にと思うのだが、後の工事が目白押し。ビールを飲んでちょびっと休憩タイム。その間に鳥肉とゴボウの煮物を作る。
雲行きが怪しいので西側の壁も仕上げにかかる。下地は出来ていたので、涙トタンを寸法切りして貼る。入り口のサッシュ廻りまで貼った時に、雨、雨、雨が降り出す。
16時近かったので、本日は終業とした。途端に疲れがどっと出る。スタッフが風呂に入っている間、横になった。すぐに意識が無くなってぐっすり眠った。
20時、消灯。

(8月27日)、小雨後晴れ後曇り。
スカッとした天気にならない。グズグズ、メソメソした空模様だ。まあ、仕事に差し支える程の雨ではない。
5時に目が覚めた。発電機を回す。食事の用意をする。気付け薬のビールを飲む。そして8時から少し寝る。気楽な稼業だよね。小屋番暮らしは、雪害さえなければね。
9時から西側のドアを正規の位置に取り付ける。とは言え、簡単ではない。下地の兼ね合いが結構難しい。試行錯誤して曲がりなりにも完了したのが11時。ビールを1本だけ飲んで工事再開。東側のドアの取り付けを始める。施工方法が理解できていたので、意外に早く取り付けられた。
スタッフの小森さんが昼過ぎに到着。挨拶を交わして、しばし休憩。15時半に宿泊者も到着。急いで大工道具を片付ける。
17時半に夕食スタート。山の話で盛り上がったが、明日は4時半の朝食なので20時に消灯。

(8月26日)、雨後晴れ後雨。
台風の影響で夜半に強い風が吹いていた。雨もザァ―ッと音を立てて降る。そのたびに目が覚めた。
朝食は4時半。なので、起床は3時半。3人分の朝食ぐらいなら、時間に追われることはない。
朝食が済んだ5時に、明るくなって歩けるようになる。3人とも6時に出立した。
疲れる。マラソンに例えれば折り返し地点だ。10月12日の営業終了日まで残り50日を切った。9月1日から5日まで休暇が確保できた。もう、身体がガタガタしてきたのでとても助かる。スタッフの皆が交互に、小屋の留守番をしてくれるんだ。
〃嬉しいよ〃
10年前には想像できなかったことだ。3ヶ月間休日なしで小屋番をするのは、正直しんどいです。
11時から時折強い雨が降り出しました。が、ギブアップはできません。折り返し地点から残工事の日数を割り付けると、多少の雨なら休んではいられないのです。
入り口の壁を仕上げにかかりました。撤去は終わっていたので、骨組みから手を付けるのです。荷揚げした材料はほぼ使い切ったので、古材を再使用します。手間がかかります。
16時過ぎ、下地の壁板まで貼れました。良く働きました。全てギリギリですが、まだ闘魂は残っています。
明日からは小屋閉めを念頭に置いて、工事の段取りをします。確実に一つの仕事を手残りがないように仕上げるのです
19時前に「テント場はありませんか?」と2人組みが来た。「勝手にしやがれ、オオバカ野郎共」と怒鳴りつけたいところだが、寝る場所がなければ楽しい山の思い出が得られない。非常時と解釈して、ヘリポートにテントを張らせた。
………。
20時消灯。

(8月25日)、晴れ午後から雨。
雨の降らない日はない。もう9日間降っている。降りっ放しではないので工事はそれなりに進捗している。
天気予報では昼前後に雨マークがあったので、8時から作業を開始した。昨日骨組みを終えた調理場の壁に補強の丸太を入れて壁の仕上げに着手する。
午前中は布団を干せる程の晴れではなかったが、作業には支障がなかった。昼前にパラパラ降り出して、13時過ぎると電動工具が使えない程度の雨になった。幸いに、工事は昼前に雨仕舞いまで出来た。
余裕で昼のビールを楽しんでいると、宿泊者が二人。夕食まで4時間あるので、昼飯を食ったら横になってたっぷり休憩をするつもりだ。
2時間眠った。壁廻りの修理が概ね終了したので、安心した。15時に単独の宿泊者。受け付けをしてから夕食の用意を始める。雨は上がりそうな気配だ。どうやら台風は逸れたようだ。
17時半、夕食スタート。宿泊者の相手をしながら、ビールと日本酒を飲む。食欲はあまりない。早めに寝たいので20時に消灯した。

(8月24日)、曇り後晴れ。
朝は霧雨が降っていたけれど、10時頃から晴れてきた。今日こそ布団を干そうと思っていたが、とてもそんな状態の天気ではない。
朝飯を終えて8時半から作業を開始した。サッシュのガラスが粉々に割れたので透明のアクリル板を加工してガラス代わりに使用するつもりだが、サッシュと建具の修行をしていないので、仕上げは保留。
調理場の壁を撤去して台風の雨に耐えられる状態に、するぞ!と気合いを入れるつもりが、ちょっとだけビールを飲んでいる。今、11時です。
酔っ払ってはいられない。自分で工事を進めなければならない。代わってくれる人はいないのだ。ストライキを起こしそうな身体に鞭を打って仕事に励む。
工事を始めれば、職人の血が騒ぐ。壁の撤去、折損した柱の撤去。壁板の撤去、ゴミ運び。結構疲れます。
でも、愚痴は言っていられません。このままでは下山できないのです。
今日は宿泊の予約がないので、17時まで作業ができた。おかげさまで骨組みだけは、できました。明日は天気が良い、と言う予報なので、外部は仕上がると思う。
20時半消灯。
白馬と唐松の小屋は明かりが煌々としている。

(8月23日)、雨。
予報では陽射しがありそうだったので布団を干そうと思っていたんだ。そしたらね、少雨が降っているんだよ。少し弱っているよ。
宿泊者は7時に出発した。池の平小屋までなので、のんびりしていたね。朝飯が遅くなったので朝の休憩もずれ込んでしまった。
10時、飛び起きて作業開始。東側の壁が歪んでいる。サッシュを撤去して補強の柱を入れる。ジャッキアップして柱の歪みを矯正しながら新しい柱を抱き合わせるのは、一人では骨が折れる。
小雨が降り続くので窓際の作業は、はかどらない。16時半まで気力を振り絞って頑張った。どうにか荒仕事だけは仕上がった。雨に濡れて、さしものの闘魂も擦り切れそうだ。
風呂に入ってから夕食にした。まだ調理場の壁の修理が残っているので、ビールが進まない。18時半に布団に潜り込んだ。読書を2時間して、消灯をした。

(8月22日)、雨。
昨日は登山者の姿が皆無だった。8月にしては珍しい。来年から8月と言えども、この程度の来客数と腹をくくっておこう。
以前籍を置いていた、新座山の会から電話があった。高橋仙人の顔を見に行きたい、と言う人が何人かいる。室堂からのコースを歩きたい、とのことだった。
電話をくれたのは、加々良敏江さん。60歳で急死した前会長の奥さんだ。あれから14年が過ぎた。敏江さんは前会長と同じ年齢なので74歳の筈。皆さん年をとりましたね。亡くなった人も多くなりました。月山、鳥海山を土曜、日曜日で登った杉江さんの訃報も7月に山小屋で聞きました。ご冥福をお祈りします。
8時半から作業を開始した。外仕事はできない。部屋の整理と道具置き場の新設。ロープで間に合わせていた雨具掛けを、丸棒に代える。整理をすると通路がかなり広く見える。結果が直ぐに出るので、やりがいがある。
昼休みもそこそこに作業に没頭する。相変わらず雨は降り続いている。屋内の仕事もこなし切れないほどあるのだ。
一段落したのが16時半。欅平からダイレクトで来る登山者の予約を受けている。悪天候なのでキャンセルかと思ったら、17時半に到着。お茶だけは作っておいた。二人前なので慌てるほどではない。味噌汁を作りながら、天ぷらの食材を調理する。食器をテ―ブルに並べて飯が炊けるのを待つ。
18時半に夕食を提供できた。疲れていたために、20時で消灯させてもらった。移植後3年でリンドウは蕾を持つ。薄く淡い紫が初老の瞳に眩しい。

(8月21日)、雨。
欅平まで帰る組は朝食が4時。阿曽原までの組は6時の朝食が定番です。どうした訳か今朝は、3時に起きるのが辛かった。腰に張りがあって重苦しい。年齢のせいにはしたくないが、ちょっと作業を頑張ると2、3日身体が痛だるい。
6時半に遅い組が出発した。独りでチャーハンを作って食って横になった。今日は一日中雨のようだから、半休の時間割で作業をするつもり。
30分間読書して眠った。目が覚めたのが9時。雨は降ったり止んだりで回復の兆しは無い。
受け付けの部屋を整理して、棚を造ることにした。雨の合間に外の材料を部屋に運び込んだ。90センチ角で奥行き35センチの棚を造るのに14時までかかった。片付けと明日の段取りをして風呂に入る。食事の用意をしてくれる人がいれば、もう少し頑張れるが、独りでは無理が利かない。
昼の残り飯を温めて食った。17時から20時まで3時間、冷凍食品のために発電機を回す。テレビの番組はこれと言ったものが無い。読書で暇をつぶして、20時に消灯。大した作業ではなかったが、徐々に片付いていくので、気持ちがいい。

(8月20日)、曇り時々小雨。
習慣で、午前2時に目が覚める。けれど宿泊者がいないので今朝は安心して二度寝ができる。起床したのは5時。もう少し寝ていたかったが、温泉の調整に行くので「ヨイショ」と気合いを入れて起きた。
道具をザックに詰めて源泉に行く。長靴なので凍っている雪渓は滑りそうで恐い。湯の出が悪くなった原因の調査をする。おおよその状態は湯の流出状況を見れば想像はつく。
今年は雨が少ないので、水が枯渇しているようだ。降りすぎる雨も困るが、日照りの夏も支障がある。湯の出は悪いが入浴に不自由する訳ではない。しばらく様子を見よう。
フキを採って小屋に帰ると、下山者が立ち寄りの入浴を希望したが、風呂掃除中だったので断った。
女湯の亀裂から湯が漏るので修理をする。ゴミを燃やして洗濯をして朝飯を食ったら、眠たくなった。11時まで休憩。
採ってきたフキとアザミと8本だけのゼンマイの処理をする。日が照っていないのでゼンマイはストーブを点けて干した。
日中なのにストーブを点けても苦にならない。季節は移り変わって、秋が肌に感じられる頃になった。昼飯を食っていたら、池の平小屋からの2人組が到着。風呂上がりに昼食を頼む、との仰せつけだ。
昼飯が一段落した時、二組目の登山者が到着。早いけれど夕食の用意を始めた。
17時半、スタート。20時消灯。


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