仙人温泉小屋 トピックス

小屋番日記
「9月3日〜20日」
(高橋仙人 2016年9月23日掲載)

20日。雨。
12時頃地響きがして、地震の揺れを感じた。気象庁のホームページに黒部川の十字峡の上流で群発地震が発生していると大阪のОさんから報告があった。
台風が九州地方に上陸して、本州の太平洋岸を東進している。峡谷鉄道は本日終日運休なので登山者の姿は無い。朝飯を食って11時まで眠る。


19日。雨。
昨日から降り出した雨は止む気配がない。宿泊者が出発できるような状態ではない。とにかく凄い雨なので橋が心配になった。
8時に沢の水量を見るに行くと濁流が橋を押し流す寸前だった。雨が小康状態になった一時間後に沢に行くと、水位は30a下がって、流れは澄んでいた。足止めになっていた登山者は安全に橋を渡って下山して行った。
本日上山して来る大阪のОさんから、「峡谷鉄道が運行してないので小屋に行けない」と電話があった。11時に欅平駅に電話して列車の運行見通しについて問い合わせると、13時53分の一便だけ宇奈月行が出発する、それ以外は運休すると云う説明だった。
大雨だし、下山路の列車は動かないので登山者は全くいない。仙人温泉小屋の二人はゆっくりと風呂に入って、夕食を食って寝た。
19時半消灯。

18日。雨。
大雨注意報が発令されている。北陸地方は120ミリの降水量になると3時のニュースでラジオが言っている。
朝食は5時。素泊まりの宿泊者が二人。2食宿泊者が二人。3人は6時に出発して行ったが、一人は出発を見合わせて連泊。
昨日池の平に宿泊した4人が10時前に立ち寄って休息をした。その後二人2組の登山者が通過しただけで、強い降りの雨が断続的に続いている。
読書三昧の一日なので腹が減らない。食欲がない。昼にビールを飲みながらフグの卵巣をつまんで酔うことを楽しんだ。
午後も読書をしたり、ウトウト眠ったりした。16時半に予約の宿泊者2名がずぶ濡れで到着。こんな雨の日だから宿泊者はいない、と判断していた。さあ、忙しい。直ぐに夕食の用意を始める。と、温泉が止まっていると指摘されて驚く。温泉を楽しみに来ている宿泊者のために、源泉まで修理に行った。
修理は17時半に終了した。夕食はΤさんが整えてくれた。小屋番が二人いれば多少のアクシデントは乗り越えられる。
18時、夕食開始。
仙人はクシャミが出て寒気がしてきたので布団に潜り込んだ。雨は断続的に降り続いている。
20時消灯。


17日。曇り後雨。
16号台風の動きが遅い。明日からの連休が秋雨前線と台風の影響で雨に祟られそうだ。
宿泊者は5時半に出発して行った。順調ならば15時に欅平に着く筈だ。雨に降られない事を祈る。
14時半に予約の宿泊者が到着。雨が降り出した。明日から手伝いに来る予定だった大阪のOさん、Hさんの両名は上山が日延べになった。
16時半、もう来ないだろうと思っていた欅平からの予約者が到着。にわかに調理場が慌ただしくなる。炊飯器の米を追加、味噌汁の具も追加、天ぷらの材料も用意し直す。バタバタと段取り替えをして、何とか夕食の定時までに間に合った。
雨は強く降ったり止んだりの繰り返しだ。明日の天気が心配だが、こればかりは手の施しようがない。人の都合で地球が回っている訳ではない。人事を尽くして天命を待つ、と云うのが仙人の心境だね。
20時消灯。


16日。曇り。
人は産まれた土地の気候が暑さ、寒さに対する順応性を育むのかも知れないね。
昨日宿泊した人は、沖縄出身の人だった。17点℃の気温を寒がっている。聞けば沖縄では真冬でも10℃以下に気温の下がる日はないらしい。
昼には薄日が射した。予報では高気圧に被われるため、もっと日光に恵まれそうだった。
14時。真砂沢ロッジから朝に宿泊の申し込みのあった夫婦が到着。昼のビールを飲んでいたので、緊張して受け付けをした。昨日は宿泊費を少なく請求してしまったのだ。どうも昨今は飲むと頭の回転が鈍くなる。計算間違いをしばしばする。
解っている。
解っているが飲み出すとなかなか止まらない。酒に飲まれてしまうまで飲んでしまう。
夕食の用意は何とかこなした。接客を桐生市のΤさんに頼んで、寝室で横になる。酔い醒ましの水を飲みながら、後悔をする。


15日。曇り。
本日は青梅市のΚさんが下山する日だ。交代で桐生市のΤさんが上山して来る。スタッフが代わるたびに新鮮なキャベツ、納豆、生ラーメンなどが山小屋に届く。缶詰やレトルト食品が並ぶ食卓が、華やかになる。決まりきった食材の料理が毎日続くと、どうしても食欲が落ちる。健康を害する寸前の体調になる。
仙人温泉小屋は去年、3ヶ月に3回ヘリコプターで荷揚げをしていた。今年は2回だけで済ませたい。3回目の経費を賄える余裕はないからだ。
Κさんは5時半に出発して行った。交代で来てくれるΤさんは15時ぐらいの到着の筈。自宅でブドウを栽培しているので、多分届けてくれると思う。
13時半に予約の宿泊者が到着。この人を含めて4人しか通行しない雲切り新道の木の葉が、少し色付き出した。
14時半にスタッフのΤさんが額に汗を滴らせて到着。生野菜をたくさん担いで来てくれた。宿泊者にお裾分けして15時から20時まで飲んだ。
宿泊者の故郷は沖縄だった。味見させてくれた泡盛は美味かった。
20時消灯。

14日。雨。
それにしても雨の日が多い。登山道や橋の被害はないが、小屋の売り上げに対する被害は甚大だ。
ちょっと朝寝坊をしたので6時に発電機を回す。テレビの天気予報を見ると、大型の台風が発生していると報じている。連休に本州に接近しそうだ。
連休に雨か、と思うと朝酒が不味くなった。
山小屋の経営は、水物である。日銭商売である。悪天候が続けば宿泊者の数は激減するのだ。15年間経営しているので赤字の時の覚悟は出来ている。
今年は平年の三割程度の売り上げだ。もう絶望的と笑うより仕様がない。絶望から回帰してまた来年は希望を持たなくてはならない。
一日中雨だったが、二人の登山者が登って行った。
Κさんは明日下山する。
19時半消灯。

13日。雨
夜半に大降りになった雨は10時まで降り続いた。ずぶ濡れの登山者が一人だけ下山して行った。
朝食後に朝風呂に入ってから読書。
昼にビールを飲むとちょっと寒気がしてクシャミの4連発。身体もだるかったのでまた横になった。14時から夕食の用意を始める。今夜はスタッフ二人だけの食事だからね。カレーにした。
昼に止んだ雨が夕方にまた降り出した。
19時半、消灯。

12日。晴れ。
天気予報に反して、青空だ。碁友とスタッフのMさんが下山するので雨でないのは助かる。
5時に朝食開始。仙人とスタッフのΚさんは何時も通り朝酒。6時前に下山の二人は出発して行った。
朝飯を食いながら枕カバーの洗濯をする。7時半に洗濯は終わった。少し眠る。
11時に昼のビールを飲む。焼きそばを食ってから、読書を二時間。そしてまた眠る。
16時に風呂に入る。宿泊者は0人なのでゆっくり風呂を楽しんだ。
Κさんは18時半に就寝。冷凍庫のために19時半まで発電機を回す。美空ひばりの悲しい酒を見ていたので消灯が15分延びる。バッテリーをHさんが設置してくれたので重宝している。感謝。

11日。晴れ後曇り後晴れ。
天気が長続きしない。昼には日差しが無くなった。明日からは雨の予報なので登山者は少ない。7人が下山したきりだ。その分静かな山暮らしができる。決して喜ばしい事ではないが、街での騒々しい生活を思うと暇すぎる時間も良い!と感じる。が、暇つぶしをのんびりしていられる年齢ではないが……。
昼前に池の平小屋の八千代さんが訪ねて来た。仙人温泉小屋と池の平小屋との距離は徒歩2時間ほど。街では遠いと感じるけれど、山では至近距離なのだ。
ビール、日本酒、ワインを飲んで笑談していると、7年来の碁友が宿泊に来た。こうなるともう、昼飯どころではない。早速碁盤に向かって打ち出す始末。二局打って16時に風呂に入った。
少し眠った。17時に起床して夕食の用意をする。2ヶ月間無休で頑張ってくれたMさんが明日下山する。今日の夕食はささやかな感謝の気持ちを込めて、トンカツにした。
夕食の用意ができた18時からまた一局打った。20時に消灯をしてからはバッテリーの電源で終局まで打てた。楽しい一日だった。


10日。快晴。
天気が良いと朝は冷える。気温は13℃だった。
手伝いのボランティアは池の平まで散歩に行く。登山道の様子を見ながら、紅葉の具合も見て来ると言っている。7時に出発して行った。
小屋の入り口に方位盤を設置する事にした。方角が確認できれば登山者の役に立つのではか、とスタッフで話し合った。手頃な岩を安定させて上面を30センチの直径で円を磨き出す。自然の花崗岩なので、硬い。それなりの道具があるのでなんとかなる。半日で研磨は終了した。昔の人は花崗岩より硬い翡翠を磨くのにどんな方法で、どんな道具を使用したのだろうか、としみじみ思う。
昼過ぎから5人の宿泊者が到着した。さすがに土曜日だね。
夕食は17時半。
スタッフの食事は19時半から30分。大阪のNさんがカツオのタタキを差し入れてくれたので、日本酒が美味かった。
20時消灯。


9日。小雨。
3時に雨の音で目が覚める。また雨か、と思うと熟睡出来ない。宿泊者の食事は6時。一人分だから30分あれば用意できる。
宿泊者も雨模様の天気なので出発を躊躇している。朝食後、食堂でゆっくりしていた。8時過ぎると薄日が射すようになった。
今日も登山者は出発して行った一人だけ。
スタッフ三人で夕食時に酒を飲んで眠った。
20時消灯。

8日。雨。
深夜には星空だったが、夜明けとともに雨が降り出した。予報では100ミリの大雨だ。が、北陸地方は予報が外れている。降水量は50ミリ程度だ。
昼前に宿泊者が一人来た。登山者はその一人だけで、誰も通らない。
暇なので風呂でタライ酒を楽しんだ。しこたま酔って定刻の20時に寝た。

7日。晴れ後夕立。晴れた、と言っても何時雨が降るか解らない天気だ。
昨日、安曇野からボランティアの女性が一人来た。ナス、キュウリ、ゴ―ヤ、リンゴ、ナシ、トウモロコシ、納豆を持って来てくれた。
山小屋の食事は食材が限られているので単調になる。たまには変わった食材を担いで来て貰わないと、栄養が偏ってしまうのだ。
今日は登山者が一人もいない。9月初旬は例年暇なのだが、今年は別格だね。3年もこんな年が続くようだと、廃業を意識するようになるね。
20時消灯。

6日、晴れ後夕立。今年の前半は台風の発生が異常に遅いので、9月には大発生するだろうと云う予感はあった。覚悟はしていたが、毎日台風の雨が降っている。
12号が日本海で衰えたと思ったら直ぐに13号が日本の太平洋岸に接近している。また3日以上雨の日が続きそうだ。
登山者は4人通過すれば多い方だ。全く登山者の姿を見ない日もある。
こんなに営業成績の悪い年は初めてだ。
20時消灯。

5日。晴れ後雨。
今日の雨は纏まった雨だ。
昼までは晴れ間があったのに午後からは雨が止みそうにない空模様になった。けれど、雨に負けない登山者が二人宿泊した。
仙人はまだ食欲が無い。熱中症の症状をまだ引きずっている。幸いにして、ボランティアスタッフが二人いるので営業には差し支えない。
20時、消灯。

4日。晴れ後雨。
台風は九州地方の西岸をゆっくりと北上している。北の寒気と台風の暖気がせめぎ合っている。北陸地方の天気も急変する。
昼から雨が降り出した。かと思うと日差しが戻ったりする。
昨日の疲れがどっとでたので一日中寝て暮らした。食欲が無いので、ビールと日本酒を飲んで眠った。

9月3日。晴れ。
台風が熱風を運んで来る。暑い。とにかく暑い。雲切新道の登りが辛い。本日の天気予報では、熱中症の危険情報が発令されている。
無風状態の樹林帯の登りは呼吸が荒くなって苦しい。心臓の鼓動も急になる。限界まで歩いて立ち休みをする。イチ、ニ、三〜十まで数えて歩き出す。五分登るとまた立ち休み。ザックの中にはキャベツ、生ラーメン、納豆、ソーセイジ、ナスなどで満杯だ。どれも山小屋の必需品だから置いて行く訳にはいかない。
ブナ林を過ぎて針葉樹林に入ると、ぐっと涼しくなる。呼吸も順調だ。
適度に水分を補給してひたすら登る。この調子なら何時も通りの時刻に着きそうだ。


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